公演概要
  公演趣旨
  出演者
  公演目的
  作品概要
  台本
  Kim Sang Soo
  2003・東京公演記事
  Photo
  2001年
   韓国- ソウル公演
  2001年
   日本- 大阪公演
  kimsangsoo.com
【公演目的】
 

 

人間の未来に希望はあるのか。さもなければ、21世紀の人類は世紀末論的な問いの前に手をこまねき、立ちつくすだけなのか。現実を見つめるというのは、このような両極の錯覚だけではないはずだ。今日の私たちの世界は、この問いと理解に対する作業をどの時代よりも複合的に考えることを迫られている。人間を規定するすべての制度とともに、人間の内部に宿る認識と変容を、歴史を理解することで考察しようとする努力は、人間の歴史という名のもとで当然の作業である。

今の私たちに必要なのは、徹底的に自己を省みる思惟である。私たちは独断と否定、ディスコミュニケーションを乗り越え、人間の言語に粘り強い関心を持つ以外にはない。社会と人間に対する新たな思考、それに対する信頼がなければ、希望さえないのではないだろうか。

人間と人間、自然の中の人間、人間と宇宙、この共生の問題ほど、新たな千年を鋭く問うものはどこにもないのではないだろうか。暴力的、破壊的な文明の代案として、今更のごとく人間の存在とは何かを問わなければならない。由緒深い人間は、人間の名のもとで再び立ち上がらなければならない。〈島・isle〉のテーマはまさにここにある。
今回、東京での〈島・isle〉の公演にあたっても、これらの問い、テーマは同じだ。私にとっては、どこで演劇を作ろうが、どこで公演をしようと、大きな差はない。どこにおいても、演劇は時代の精神であり、眼となりうるからだ。
重い歴史と現在を共有する日本と韓国、そこから垣間見える人間の存在、そこに希望を見出す作業を日本のアーティストたちと共に可能にすることができるならば、それは国という概念を越えて、一つの大きな普遍と出会うこととなるであろう。そして、まさにこれこそアートの可能性である。ますますコミュニケーションが必要となる21世紀、その作業を今、日本で始めようと思う。

金相秀